東京ソワール 揚羽

写真左から:
株式会社東京ソワール 執行役員 デジタル戦略部長 兼 マーケティング室長 島村 聡さま
株式会社東京ソワール 経営企画本部 経営企画部 鹿島 直樹さま
株式会社揚羽 制作第1部 プロジェクトマネジメント1グループ 小林 夏帆
株式会社揚羽 ブランディングコンサルタント 兼 クリエイティブディレクター 板倉 マサアキ
株式会社揚羽 ブランドマーケティング第1部 ブランドマーケティング3グループ 細川 和正
※2024年4月取材当時

【ご依頼前の背景】

  • 昨今の生活様式の変化、新型コロナウイルスの影響で事業の変革を迫られる中、中期経営計画でフォーマルにとどまらない新たな領域での事業展開を目指す長期ビジョンを策定。
  • ビジョン達成のために、まずは従業員への理解促進と共感による意識変革が必要である。
  • これまでフォーマルウェアとは馴染みがなかった若年層に向けても、東京ソワールとしてのブランド認知を獲得する必要がある

プロジェクトの背景・ご支援のきっかけ

― 2022年12⽉から2023年12月までの、リブランディングプロジェクト全体の流れをお聞かせください。

板倉
東京ソワールさまが新しい中期経営計画の策定をコンサルティング企業と進めていく中で、リブランディングの必要性が高まり、ミッション・ビジョン・バリューなどのメッセージをはじめとしたブランドシンボルの開発パートナーとしてご用命いただいたのがはじまりです。
それまでにコンサルティング企業と検討してきた調査内容をもとに、2023年1〜3月の期間で「ブランドシンボル開発」として、ミッション・ビジョン・バリューと、ムードボード(ブランドの世界観を写真を並べて表現したもの)の策定を支援させていただきました。
2023年4月以降は、大きく3つのプロジェクトに分けて、社内外に発信・浸透させていく活動に伴走しています。1つは、ブランドガイドラインを策定し、「ブランドの基盤」を明確化・ルール化することで、コミュニケーションツールを通じて伝わるブランドの世界観の統一を目指すブランド基盤プロジェクト。2つ目に、従業員の皆さまに新しいブランドを理解・共感していただくインナーブランディングプロジェクト。そして3つ目は、大規模な市場調査を実施することで現在の課題を特定し、新しいブランドの世界観をどのように社外に発信するかを検討するアウターブランディングプロジェクトです。インナーブランディングプロジェクトとアウターブランディングプロジェクトは、現在進行中で支援させていただいております。

揚羽 ブランディングコンサルタント

ー リブランディングが必要となった背景はどのようなものだったのでしょうか。

鹿島さま
コロナ禍の2021年から、『2022〜2024年度中期経営計画』の策定に向け議論を進めていました。コロナ禍で業績をどのように立て直していくかという話が中心でしたが、そこで顕在化したリスクや「フォーマルだけで大丈夫なのか」という考えから、『持続的な成長』や『事業領域の拡大』というキーワードが出てきました。昨今の生活様式の変化も踏まえ会社も変わっていく必要があり、まずは従業員のマインドから変革していかなければならないということで、リブランディングをするという決断に至ったのです。
そこで、中期経営計画の策定をサポートいただいたコンサルティング企業さんからご紹介いただき、揚羽さんに言葉づくりを依頼させていただきました。
経営層で検討した結果、長期ビジョンの方向性として「『人の想いを大切にしながら(本質にこだわり)』、『美しく生きようとする人々』の『本当に欲しい』を創造する。」ということが掲げられました。「美しく生きようとする人々」に、フォーマルだけでなく日々の暮らしにも価値を提供するというビジョンです。
まずは、長期ビジョン、つまり、リブランディング後にありたい姿を、従業員に伝えていく必要がありました。とても抽象度の高い言葉を、どう腹落ちさせて浸透させるかという部分だったので、単純なコピーライトだけでなく、弊社の歴史や強みをしっかり理解したうえで一緒につくりあげていただくことを期待していました。

東京ソワール リブランディング 対談

板倉
私どもにお声がけいただく前から、中期経営計画策定にあたり、ブランドストラクチャーと言われるブランドが持つ価値を構造的に配置したものも議論されていましたし、ビジョンに関しても「誰に(美しく生きようとする人々に)、何を(本当に欲しいを)、どうやって(人の想いを大切にしながら“本質にこだわって”)」という部分が綺麗に整理されていたので、言葉づくりフェーズはスケジュールとしてはタイトでしたが、とてもスムーズに進んだ印象でした。

鹿島さま
そうですね。
ですが、最初私たちプロジェクトメンバーが経営陣から降りてきた長期ビジョンを見たときはあまりピンときていませんでした。2040年というかなり先の話で、さらに、具体性はなるべく排除して考えられたということで本当に抽象的でした。『美しく生きようとするってどういうことだろう』といったことから時間をかけて話合いながら言葉をつくっていったという印象です。

言葉づくりのプロセス

ー 2022年1月から始まったブランドシンボル開発プロジェクトは、どのような社内体制で進められていったのでしょうか。

鹿島さま
ある程度歴史を知っているということから社歴が長い社員を中心に、各部門から横断的に、網羅的に議論ができるようにメンバーを選定しプロジェクトチームを編成しました。経営陣には引き続き長期ビジョンの大枠を固めていただき、ミッション・ビジョン・バリューとして言葉にする部分はプロジェクトメンバーに任せていただく体制でした。
言葉づくりフェーズに入ってからは、3か月間、週1回の定例ミーティングを開催し、揚羽さんから提案いただく言葉をベースに議論していきましたね。

板倉
はい、事前にコンサルティング企業さんの報告書も拝見していたので、ある程度言葉の方向性は検討できていました。定例ミーティングで集まった皆さまのご意見を反映し、ブラッシュアップを重ね、ビジョンは『人を想う気持ちに寄り添い、“生きる”をもっと、美しく。』に、ミッションは『大切な想いの、すぐそばに。』に決定しました。
フォーマル事業で培ってきた「大切な人を想う気持ち」に寄り添うことを、特別な日だけでなく何気ない日常にも「もっとすぐそばで」多くの人に届けたい。そういう想いを込めたミッションです。

鹿島さま
最後は全会一致で決まったのがすごく印象的で、良く覚えています。

板倉
そうでしたね。『大切な想いの、すぐそばに。』は、一番はじめの弊社からの提案の中にはなく、皆さまの想いを紡いでいって、皆さまでつくりあげた言葉だったからだと思います。
こうして3月末に、ブランドシンボルという形で、言葉とムードボードを策定させていただきました。
ムードボードは、事業領域の拡大により、自分たちがどういうシーンに価値を提供することになるのかを感じてもらうため、美しく生きようとするすべての老若男女の日々の暮らしを想像させるシーンを並べています。

■ムードボード

ムードボード 東京ソワール

■理念体系

ブランドストラクチャー 東京ソワール

ー 言葉が策定されたとき、どのようなお気持ちでしたか。

島村さま
私たちにとって言葉づくりは初めてのことだったので、正直、最初はどう進行すれば良いかという戸惑いはありました。ですが、言葉づくりのプロセスは、今まで私たちが積み上げてきたものの振り返りでもあります。どちらかというと前へ前へ進んできた日々の中で、一旦立ち止まって、これまで積み上げてきたものを確認する良い機会になったと思います。
そして、今まで積み上げてきたものが言語化されて、これから未来に向かうためのパワーとなるような言葉になるといいなと思っていましたが、それがしっかり言語化されたという印象です。

東京ソワール インタビュー

本記事ではリブランディングの背景と、ブランドシンボル開発プロジェクトについて、お話いただきました。次の中編では、新たにスタートした「ブランド基盤プロジェクト」「インナーブランディングプロジェクト」「アウターブランディングプロジェクト」のうち、「インナーブランディングプロジェクト」について伺います。